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生徒会曰く。
「青山!遅い!!」
『生徒会室』と書かれたプレートが貼り付けられた重厚なドアを開けると、途端、怒声が飛んできた。
「青ちゃん!救世主!待ってた!!予算会議のタイムスケジュールのデータ、どこだっけ!?」
「ハリーアップです。青くん、今日期限の書類、積み上がっちゃってます」
上から副会長、会計、書記のセリフだ。
「定例会で遅くなるって言いましたよね」
「知らん」
細いフレームの眼鏡をかけた、神経質そうな容姿の副会長は、一言で切り捨てる。なら聞くな。
「混ざるからって、こないだ新しくフォルダ作ったでしょう。2015の中に入ってる予算会議ってやつを開いてみてください」
「えーとえーとえーと……あった!」
女性に好まれそうな甘い美貌の会計は、チョコレート色の瞳を丸くして、焦りながらマウスを操作する。見つけたと同時に、YES!と拳を高く突き上げた。
「書類の半分ほどは、今朝処理してあります。残り半分は会長の印、もしくは顧問のサインが必要ですので、仕上げたら先生のところへ行ってきます」
「手伝う、です」
「ありがとうございます」
長い前髪に顔の半分が隠れている書記は、眠たげな目とのんびりした口調がチャームポイントな癒し系だ。
仕事を促されたオレは、会長の執務机に積み上がる書類を手に取り、来客用のソファーへと向かう。会長の席を使えと言われるが、それは流石に躊躇われた。
蹴落とそうとしている今なら、余計に。
「青ちゃん、青ちゃん」
「何でしょうか」
仕事中、会計はオレに呼び掛ける。だが互いの手は、止まる事なくキーボードと書類の上を走っていた。
話しながらの作業はミスを招く恐れがある。けれど黙々と山積した書類を片付けていると、頭がおかしくなりそうなので、適度な会話は黙認されているのだ。
「忙しい時期抜けたら、一緒に遊びに行こうね。オレ、カラオケ行きたい」
「僕も行くです」
「オレも行くぞ」
「いや、そんな顔しなくても分かってますよ。ここで会話してるのに除け者になんてしませんて」
眼鏡のフレームを骨ばった指で押し上げた副会長は、据わった目でオレを睨みながら言った。前回、具合の悪そうだった副会長を先に帰し、オレ達だけでボーリングに行ったのが未だ尾を引いているらしい。
思いやりだったのにと言えば、余計なお世話だ連れて行けと仏頂面で言われた。寂しがり屋か。
「あ、でも、無理かもしれません」
「何だと」
思い出して呟けば、即座に鋭い視線が刺さる。
「オレと一緒では嫌だと抜かす気じゃないだろうな」
「そうでなく。オレ、会長にとって代わる気なんです」
「……は?」
「え?」
「ふえ?」
ポカンと、彼らは呆けた顔を晒した。
やっぱり反応は、皆一緒なんだなあと大した感慨もなく思いながら、言葉を続ける。
「会長をリコールして、オレが会長に立候補するつもりです」
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