Others 4 「八束……お前、熱でもあんのか?」 オレは真顔でそう問う。 何か、本気で心配になってきた。だってコイツ、こんなキャラじゃなかったよ。さっきまで。 「黙ってろ、蜜」 「無理。……見ろよお前、早乙女だって呆れて」 「分かった。受けて立とう」 「いや受けて立つなし!!」 呆れたオレが振り返った先、凛々しい表情で早乙女は宣言した。オレは思わず全力で突っ込む。 あれ?これ、オレがおかしいの? オレの感性の方が、どうかしてるのか? 螺子が飛んだものと思われる八束だけでなく、何故か早乙女までもが釣られてしまっている。いい加減、ブチ切れそうだ。 こいつら纏めて埋めたい。 「何なのお前ら……つか、八束。お前のチームにもセッターいるだろうが。ソイツに失礼だと思わない訳?」 額に青筋を浮かべつつも、冷静さを保ちながら、そう諌めてみる。落ち着け、落ち着くんだオレ、と呪文の様に心の中で繰り返しながら。 周囲の冷めた……というかドン引いた反応を見れば、コイツらも少しは冷静になるんじゃないか、とも思うし。 ……だが、そんなオレの一縷の希望は、あっさりと砕かれた。 「や。お構いなく」 そう言って、八束のチームのセッターは右手を上げる。爽やかな笑みが、今は心底憎かった。 「何や面白そうやし。オレなら全然オッケーやから、気にせんでええよ」 少し高めの声には、西の訛りがある。うちのクラスの……名前は確か、入鹿だったけ。 無駄に爽やかなこの好青年は、確かバレー部。うちのチームにとっても、トレードは悪い話じゃないって事かよオイ。 そろそろオレの右手の力が抑えられなくなってまいりましたよ。厨二的意味じゃなくて、純粋なる暴力的にね。 「……先生」 「面白いから許可する」 最後の砦とばかりに、縋る目で教師を見る。 だが奴は、間髪置かず言い切りやがった。お前もかブルータs(ry 何故だ。何故味方がいない。 八束の親衛隊は輝く様な笑みを浮かべて見守っているし、観戦している連中は、完全に面白がっている。八束のチームの連中も同じ。白鳥は引き攣った笑顔で『モテモテだね……』なんて呟いてやがるし。 全然。本当、全然全く嬉しくないんですが!!? 同性にそんな扱い受けて喜べるかっつーの!! 「……ざけんなぁあああ!!!」 オレは吠えた。 キャラじゃないとか知ったこっちゃない。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |