Others 7 それからオレ達は、レシーブの練習を緩くしながら、他愛もない話をした。 最初の頃の刺々しい態度は、好奇心で話し掛けてくる手合いへの牽制だったらしく、早乙女は割りと話しやすい奴だった。 早乙女の独特な話し方は、どうやら時代劇好きなお祖父さんから移ったものらしい。だからそんな二次元クオリティなんだな。 あと、姿勢が良いのは、剣道習っているからで、それもお祖父さんの勧めのようです。 過保護だった両親を押し切ってくれたお祖父さんのお陰で、今は健康だとか。 ついでに名前も祖父命名。 上にお兄さんが8人いる訳じゃなく、源九郎義経からとったそうだ。 牛若か…似合うな。 そこまで聞いただけでもお分かりいただけるかと思うが、早乙女は大層なおじいちゃんっこだ。 「フランス人で時代劇好きで、愛妻家で……お前のじいちゃんキャラ濃いな。いつか会ってみてぇ」 「そうか」 相槌をうった早乙女は、僅かに口角を上げた。お祖父さんの話をする早乙女は、無表情が少し緩む。 それが何だか微笑ましくて、オレもつられた様に顔が緩んだ。 「っ…!」 「うおっ!」 何故かその瞬間、早乙女の手元が狂い、ボールは明後日の方向へ飛んで行った。 慌てて手を伸ばすが、届く筈もないような大ホームラン。バレーボールって当たり所が悪いと、凄い飛距離を弾き出すよな……。 打ち上げられたボールは運悪く、端に避けてあった審判台の上にスポッと乗っかってしまった。 「わ、悪い。取ってくる」 「オレ行くか?」 「大丈夫だ」 早乙女は打ち上げた事が恥ずかしかったかのか、ほのかに頬を染めつつ、足早にボールを取りに行った。 審判台は結構高いので、上らないと取れなそうだ。 早乙女は身長低めだから尚更だな。 「!」 そう考えながら見守っていると、早乙女は軽々とジャンプして、アッサリとボールを取ってしまった。 ……随分ジャンプ力あるな。 「……おい、蜜」 「っ?」 感心しているオレの肩を、誰かが背後から叩く。 突然の事にビクリと体が跳ねる。 振り返ると其処にいたのは、精悍な美貌を不機嫌そうに歪めた八束だった。 「遅かったな、八束」 「…………」 「何かあったのか?」 「!!」 不機嫌だった八束は、オレがそう問うと顔を赤く染めた。 何故だ解せぬ。 「え、人が心配してたのに、何その反応。顔赤くする様な出来事があったのかよ。もげろリア充」 「ねぇよ!!つか誰のせいで赤くなって……っ、」 そこまで言って八束は、しまった、と言いたげに口を押さえる。意味分かんねぇ。 誰のせいって、…まさかオレのせいなの?何で? 「オレ何かしたか?」 「……してねぇ」 「でも今…」 「してねぇっつってんだろうが!!天然タラシは黙れ!!」 誰か助けて下さい。 うちの八束君が情緒不安定です。ついでに何言っているのか意味分からないです。 この中にお医者様か翻訳家の方はいらっしゃいませんか? つか、オレの読解力と理解力が無いだけ?? 八束の親衛隊の隊員が、生温い目で此方を見てくるのが辛いんだけど……。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |