Others
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「何で早乙女がいるんだ?」
「隣のクラスなんだから、当り前だろ?」
オレの呟きを拾った白鳥が、即座に答えをくれる。
「……隣?」
「そ。体育は合同だからな」
白鳥の言葉に、呆然とした。
体育の授業の度に顔を合わせていた筈なのに、気付かないとか、どんだけオレ節穴なの。
つーか、どんだけ周りに興味がないんですかって話だ。
親友を失いかけて時間を遡る前のオレは、結構排他的だったと思う。
嫌ったり拒絶したりはないものの、大切にするのは周りの極僅かな人間だけ。とても視野の狭い奴だった。
見ないふりをした歪みは、いつか巡りめぐって返ってくる。己に、そして大切にしている周りの人間にも。
それを知って尚、形だけの平穏を望む様な馬鹿にはなりたくない。
まぁ、大それた事を言っても、オレに出来る事なんて限られてはいる訳ですが……取り敢えずは。
奴らの迷惑は顧みず、ガンガン関わっていく所から始めてみようと思う。
「魚住?」
歩きだしたオレを、白鳥が呼び止める。
どこ行くの、と問う彼に、オレは事も無げに返した。
「早乙女、あいてるみたいだから、組んでもらえるように頼んでくるわ」
「……は?」
「じゃ」
スチャ、と手を上げてから背を向けると、白鳥は慌てた様に肩を掴んできた。
「ちょ、待った……!」
力任せに体を反転され、向かい合った白鳥は、何時もの緩いテンションは何処へ忘れてきたんですか、と問いたくなる位焦っている。
そんなに目、開けられたんだ。と細目な彼に大層失礼な事を考えながらオレは、軽く首を傾げた。
「……何?」
「何?じゃない!……今、早乙女と組むって言った?」
「言った」
「…………」
目を瞠った白鳥は、数秒固まった後、深いため息をついた。
「……いつからそんな無謀になったの、魚住」
呆れを隠しもしない白鳥に、オレは苦笑する。
いつかと問われたら、間違いなく志摩を失う直前から、だ。そんな事言っても、伝わるどころか頭の具合を心配されかねないので、沈黙で返すが。
それよりも今は、白鳥の言葉の意味の方が気になる。
『無謀』
体育のペアを組んでもらいに行く程度を、そんな言葉で表される事のは、一体どういう事だろう。
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