Others
接触しますか?(Ver副会長)
ピー
体育館に、ホイッスルの音が響き渡る。
教師の元に集合し、授業開始の号令を聞きながらオレは、体育館の入り口へ視線を向けた。
何故かまだ、八束が来ない。
資料を届けるだけだから、たいして時間はかからないと言っていたのに。
何かトラブルだろうか、と少し心配になる。
「おーい、魚住?どした?」
背後から肩を叩かれ、オレは我に返った。
振り返ると、白鳥が不思議そうな顔でオレを見ている。
「いや……八束が来ねぇなーと」
「獅子堂?また生徒会の仕事頼まれてんじゃないの」
まぁ、確かに。
生徒会室で役員に捕まって、何か仕事を頼まれている可能性が一番高い。
「そうかもな」
呟きながらも入り口を見ていると、意外と心配性なのな、なんて苦笑を向けられた。
「つーか、今日バレーだって聞いてた?」
軽く目を瞠り、かぶりを振ったオレは辺りを見回す。
ぼんやりとしている間に、授業内容の説明は終わってしまったようだ。
白鳥の説明によると、今日の授業はバレー。2、3人に分かれてアップ後、レシーブ等の練習。
残り時間で試合をするらしい。
「良かったら、獅子堂来るまでオレらとやらない?今、大熊がボール取りに行ってるんだ」
白鳥は爽やかな笑顔で、そう提案してくれた。良い奴。
そして、さっき更衣室で一緒だったクラスメイトの名前は大熊だった。
人の良い二人組に混ぜてもらうか、と考えつつ、ふと向けた視線の先。
見つけた人物に、オレは数度瞬いた。
壁に向かい立つ、細身の少年には見覚えがある。
襟足に僅かにかかる蜂蜜色の髪は、絹糸の様に細く真っ直ぐで。長い睫毛に飾られた同色の瞳は、宝石か飴玉のようだ。
オレの記憶にあるよりも、幼く小柄だが、西洋人形の様な美貌は見間違える筈もない。
「……早乙女?」
一人で壁打ちをする少年は、一年後の未来で副会長を勤めていた早乙女 九郎(サオトメ クロウ)その人だった。
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