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Others
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「…………」


獅子堂の唖然とした顔を見ながら思う。流石にイケメンでも、口が半開きだと間抜け顔……と笑ってやりたかったのに、イケメンはイケメンだった。
何だろうこの、苛々ムカムカしてどす黒い気持ち。……これが殺意って奴ねオバ様!!


「……なんなの、お前」


ポツリ、と呟かれた言葉に、クラスメイトの魚住蜜ですよと軽く返す。


「完璧超人なお前と関わり合いになるのは御免だったが、真面目で意外と不器用な獅子堂八束の事はフォローしてやってもいいと思ってる、善良な一生徒だ」


爽やかな笑顔で言い切ると、獅子堂は苦虫を噛み潰した様な顔になった。
あっれ。オレ良い事言ったと思ってたのに、何ですかその顔。


「人の事自惚れだの痛いだの散々からかった挙げ句、馬鹿堂呼ばわりした奴の何処が善良な一生徒だ」

「細かい事に拘ると生え際後退するって爺ちゃんが言ってた」

「誰がだ!!そもそも生え際危なくねぇよ!!ハゲかけてる前提で話を進めるな!!」

「ウンソウダネ。獅子堂ハ、フッサフサ」

「何でカタコト……テメェ、殺すぞ」

「そんなムキになるなよ大人げ無い」

「誰のせいだよ!!」

「……オレは、獅子堂に元気になってもらいたくて、わざと……」

「……その心は?」

「ハイスペックなイケメン禿げろ」

「お前絶対泣かす。元気になったら絶対泣かす」


恐ろしい形相で睨んでくる獅子堂に、オレはヘラリと笑う。


「おー怖。まぁ、せいぜい早く元気になれば」

「…………」


宥める様に髪に手をのばすと、意外な程サラサラな手触りだった。
毛根死滅しろなんて思ってナイヨと心の中で呟きながら、オレは子供にするみたいに、獅子堂の頭を撫でる。


「…………」


大きなお子様は、憮然としつつも大人しく撫でられていた。
思えば精神的には一つ下になる訳だし、年子の弟みたいなもんか?


「獅子堂って、数学得意?」

「?…まぁ、得意な方だと思うが」


微妙な言い方してるが、コイツ数学学年首位だから。
謙遜も過ぎれば嫌味なんだよとの気持ちを込めて、生え際を強めに撫でる。エム字ハゲになれなんて思って無い。多分。


「オレは数学苦手だけど、古文得意」

「!」


瞠られた漆黒の瞳に、悪戯が成功した悪ガキみたいなオレの顔が映っている。


「ギブアンドテイクってのも、悪くないと思わん?」


完璧超人になんて、なれないし、ならなくていい。
一人では出来なくても、二人なら出来る事って結構ある。組体操とか、イ○ルジョー2頭狩りとか。


補い合って生きていくのって、結構楽しいとオレは思うよ。


「…………」


真顔になったイケメンは、オレを真っ直ぐにじっと見つめた。
頭を撫でていた手を掴まれ、何故か引かれる。
至近距離では無いが、結構近い位置で見つめ合うオレ達。画的にキツい。


「……なに」

「ミツって、どういう字書くんだ?」

「は?」


突然、なに。
驚きつつも、質問の意味は分かった。過去何度も聞かれた質問だから。


「……蜂蜜の蜜でミツ」

「へぇ。……蜜」

「なによ八束」


何で名前呼び?と思いつつもノリで返せば、


「……っ!?」


びっくりする位、
うん。素で息止める位、綺羅綺羅しい笑みを獅子堂は浮かべた。


喜色がそのまま溢れ出た様な、甘い…ひたすらに甘い笑顔。何ソレ最終兵器?


満面の笑みで満足そうに頷いた獅子堂は、そのまま目を閉じ、数十秒後に我に返るオレを放置したまま夢の世界へと旅立った。


その容姿でオヤスミ三秒とか、一体どんなギャップ萌えを狙っているのと言いたくなるような寝付きの良さです。


……てか、手!手ぇ離して欲しいんですけど!


藻掻いてもガッチリ掴まれた手は抜けず。そのままオレまで古文の授業を欠席するハメになりましたとさ。


うん。八束一回泣かす。


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