Others
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ドサリ、
「……、はぁ」
獅子堂をベッドに下ろし、オレは大きく息を吐き出した。
重い、コイツ重すぎる。
半ば意識を失いかけている獅子堂を、保健室まで引き摺ってくるのは、かなりの重労働だった。
なんせコイツ、オレより10cm以上デカいし、多分体重もかなり差がある。胸板とか凄いんだよ。細マッチョめ。
「獅子堂、意識あるかー?」
「……う、」
呼び掛けると、呻くような声を出し、細くだが目を開けた。
「そのままじゃ寝辛いだろうから、取り敢えず上着脱げ。手伝うから体浮かせろ」
ブレザーに手を掛けると、緩慢な動きながらも、獅子堂は体を動かす。
片手を引き抜いてから、素早く反対側から引っ張って脱がせた。
その小さな動きですら辛そうな獅子堂は、ぐったりとベッドに身を沈める。
後は勝手にやらせてもらおうと、断りも得ずにネクタイを緩めてボタンを二個外し、ベルトを引き抜いた。
あれ。この現場を誰かに見られたら、獅子堂の寝込みを襲った犯人はオレって噂になるんじゃね?
そんな事を考えるが、幸いにも人は来なかった。
ちなみに保険医も、今日はいないらしい。まぁいたら、獅子堂が襲われる事もなかっただろうし、想定内だが。
「……悪い。面倒かけた」
ベッド脇のカーテンを引き一息つくと、そんな謝罪が聞こえた。
「…………」
見下ろすと、イケメンフェイスを切なげに歪めた男前がオレを見ている。
綺麗過ぎる顔は、十代にも関わらず、既に成熟した男の色気を兼ね備えており、そんな目で見られたら大抵の女性は落ちるだろう。
だがオレは生憎、男。
色っぽかろうと、男によろめく趣味は無い。
大きなため息をもう一度つくと、オレはベシリと獅子堂の額を軽く叩いた。
「全くだ」
「……すまねぇ」
益々眉を下げ、辛そうに呟く獅子堂の額と目蓋を手で覆ったまま、オレは言葉を重ねた。
「無理すんなよ、って言っただろ。限界になる前にヘルプだせよ」
「……は?」
何故か獅子堂は一瞬固まった後、目蓋の上に重ねてあるオレの手を掴んだ。現れた黒い瞳は、驚いた様にオレを凝視している。
「……なに?」
不思議な反応をした獅子堂に、首を軽く傾げ問うと、戸惑った様に視線が下がった。
「いや…………運ばせた事を怒ってんじゃねぇのか……?」
「それも込みだ。もっと早めに言えば、自分で歩かせられたしな。でもそれ以上に言いたいのは、周りをもっと頼れって事だ」
こんな説教は、本来オレの役目ではないだろう。ついさっき初めてマトモに会話した、単なるクラスメイトだし。何よりオレのキャラじゃねぇ。
でも、将来的に考えて、今言っとくべきかと思った。
「プライド高過ぎんだよ、お前。仕事も完璧、勉強も完璧、運動もプライベートも何もかも……そんなん無理だろ」
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