Others
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昼休みが終わって獅子堂に起こされたオレは、なんとなく流れで獅子堂と一緒に教室へ戻ってきた。
なんか、隣に会長がいるって変な感じだな、と思うが、実際問題助かった。
神様もどきによって、オレが戻ってきた時間軸は昼休み。ついでに場所は自販機近く。
何が言いたいかって言うと、一年の時の自分の座席なんて覚えてねぇって話ですよ。危うく教室さえ間違いかけたし。
獅子堂が一緒だったんで、教室も間違えずに済んだ。
で、アイツの動きや視線で、オレこの辺りの席なんだなって察して、あとは記憶を掘り起こし事無きを得た。ありがとうイケメン様。
感謝のキモチを表すべく、拝む真似をすると、気付いた獅子堂は訝しむ様に眉間にシワを寄せる。
おや、怒らせたか?と思いつつもそのままのポーズでいると、吹き出す様に破顔し小さく『変な奴』と呟いた。
色気が半端ねぇな。
イケメン様は、オレの席の斜め前だった。
こんな近かったんだなぁ。……志摩より近い。
獅子堂の整った横顔を通り越し、窓際の一番前の席、元親友の背中が見える。
頬杖をつき、窓の外を眺めるその静かな姿は、授業が始まる前の喧騒から隔絶されているかの様だった。
時間を巻き戻す前の志摩は、オレと一番仲が良かったが、これからはどうなるんだろう。
オレが獅子堂と妙な縁が出来た様に、アイツにも親しい友達が出来んのかな。
オレがいた場所に、……当り前の様にオレが座っていた席に、
一体、誰が座るんだろうな。
女々しくもそんな事を考えて、テンションが落ちた。キモいなオレ。
授業が始まっても気分は一向に回復せず、もやもやを抱えたまま、先生が朗読する更科日記の一文を聞いていた。
――カツン、
授業も中盤に差し掛かった頃、何か、物が落ちる音がした。
ふと前を見ると、コロンとシックな黒のシャーペンが床を転がっている。
「…………?」
位置的に見ると、獅子堂のものかと思う。
だが斜め前の席の男前は、拾う様子が無い。不思議に思い眺めていると、不自然に体が傾いた。
「!」
具合が悪いのか!
オレは漸く思い至る。チラリと見えた横顔は、真っ青だった。
寝不足と疲労で、貧血を起こしかけているんじゃないだろうか。
どーする、保健室か?
慌てながらもオレは、取り敢えず手を上げ席を立とうとした。
……だが、
「…せ、」
「先生!」
ガタンと大きな音をたて、席を立ち上がった別の生徒によって、オレの声はかき消されてしまった。
「獅子堂様の具合が悪そうなんですが」
気遣わしげに獅子堂を見つめるその生徒は、まるで少女の様な容姿をしていた。
サラサラの黒髪に、長い睫毛に飾られた潤んだ瞳。一見、清楚な美少女だ。
様付けな辺りから察するに、親衛隊の子かもしれない。
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