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Others
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「……それは、何の詫びだ」


低く押し殺した様な声が、耳朶を打つ。
初めて聞いた彼の声は、腰にくる重低音。オレが女の子だったらきっと、囁かれるだけで全面降伏する、そう思う位魅惑的だった。


けれど今注視すべきは、良いお声ではない。
彼のそれが間違いなく、怒っている事だ。


激情を押し殺し、彼は更に言葉を紡ぐ。


「何に対して謝る?……なぁ、」

「っあ!?」


何って勿論、勝手にオカズにした事です。
そうヤケクソ気味に言おうかと思った。どうせオレの夢なんだし。


でも無理だった。
彼が動くのと同時に、信じられない位の衝撃が、体から頭のてっぺんまで走った。


ビクビクと打ち上げられた魚の様に痙攣し、言葉も出せないオレを見て、彼は口角を吊り上げた。凄艶な笑みを浮かべた彼は、オレの体を折り曲げる様に高く、足を持ち上げる。


……足を、持ち上げる?


貧弱ではないが、妙に色の白いオレの足。密かにコンプレックスだ。
じゃなくて!!
なんでオレの足剥き身!?


今更ながら、寝転がったオレに覆い被さる彼の体勢の不自然さにも気が付いて。
それから、足どころか下半身剥き出しだとか。上半身も胸の上まで捲り上げられているとか。色んな事が目に飛び込んで来て。


あり得ない。
あり得ないから、オレ。


いくら欲求不満だったとしてもさ、
何で突っ込まれる側!?


いくら自分でも気付かないうちに、彼への気持ちが憧れを越してたんにしてもさ……これは無い!!


彼に突っ込みたいかと自問自答すると、かなり微妙なキモチにはなりますが…突っ込まれるよりはアリだ。


「なぁ、」

「っ!」


混乱したまま、ぐるぐると悩むオレに、彼は更に詰め寄る。


「やっ、…、ぅ、あ」



激しく揺さ振られ、まともな返事さえ出来ない。
どれだけ慣らされたんだか知らないけれど、本来物を入れる役目を負わない筈の器官は、一瞬の痛みさえも齎らさず。ただ狂う程の快感だけを与えて来る。


グチュグチュと耳を塞ぎたくなる濡れた音と共に、彼が激しく律動する。
オレの足や尻に、彼の腰骨がガツガツと容赦なくぶつけられた。


「あっあ、っんぅっ!!」

「っ、…は」


足を肩に担がれ腰が浮き上がる。
もう既に何度か中出しされているのか、彼がそこを深く抉る度に、泡だった白濁がこぼれ落ち尻を伝う。
その感覚さえも快楽に変わり、オレは生理的な涙を零した。


何コレ。
こんな生々しい感覚が夢の訳ない。でも現実な筈も無い。


ならこれがあの世なのか?
こんな熱くて気持ち良くて、変な方向に目覚めてしまいそうなコレが?


神様なんだか死神様なんだか知らないけれど、全力で余計なお世話だ。


オレは確かに、彼に近付きたかった。話をしたかった。
男の矜持とかに目を瞑れば、今の状況は願いが叶っているとも思う。甚だ不本意ではあるけど。


でも、

でもね。


こんな風な、一方的なオナニーで汚したいなんて思わなかった。
誇り高く綺麗な彼を、下衆な妄想で引き摺り落としたいなんて思わなかった。


例え死神が、若くして死んだオレを哀れに思い、慰める為に見せた幻だとしても、


余計なお世話だ、くそ食らえ。


この人の意志を無視して、こんな事させるなんて


例え幻でも、許せ無い。




「……っく、」


快感に力が入らない手を、どうにか伸ばしてベッドヘッドを掴んだ。
孔に埋め込まれた彼のモノを抜く為、ゆっくりと体をずらす。快感と不快感が交互に押し寄せ、小刻みに体が震える。


「う……っあ!?」


ズルリ、と抜け落ちる寸前、腕を掴まれた。
見れば、視線だけで人を殺してしまえそうな、怖い顔の彼。


「……っ?」

「逃げれると、思ってんのか?」


ヒヤリとする声音。
拘束する腕に力がこもり、ミシリと骨が軋む。


「……逃がすかよ」


クッ、と籠もった声が洩れる。
口角を吊り上げ、彼は喉を鳴らして笑った。


「らしくも無く、馬鹿みてぇに遠くから見守っていた結果、オレはお前を永遠に失う所だった。……同じ過ちはしない。二度とな」

「………………え?」


オレは唖然とした。


今彼は、何と言った?


.

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