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Others
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「ハジメッ!!」


緊迫した空気を打ち破ったのは、高い少年の声だった。


息せき切らし転がり込む様に現れたのは、件の転校生、文月 海(フヅキ ウミ)その人。
大人しやかな美貌に汗を流し、オレの腕を掴んだ。


「だ、大丈夫!?ハジメ、怪我は無い!?」

「無い」


慌てふためく少年に、オレは素っ気なく返す。
掴まれた腕に痛みを覚え振り払うと、文月の後ろからぞろぞろとついて来ていた生徒会連中の目が剣呑さを帯びた。


「ちょっと……うーちゃんに心配かけといて、何なのその態度」

「そうです。貴方の為に駆けつけてくれた海さんに対し、感謝さえも無いのですか」


可愛らしい容姿の書記や、和風美形の会計は、侮蔑を込めた視線をオレへと向けた。


「海、こっちに来い。そいつらに何されるか分かんねぇだろ」


一見不良にしか見えない副会長は、文月を背に庇う。
『そいつら』という言葉には、親衛隊だけでなく、オレも含まれていると見た。


「危ないのは、ハジメも一緒だよ!こっちおいで、ハジメ!」


副会長の背に庇われながらも、文月はオレへと手を伸ばす。


「誰がソイツなんか守かよ。オレはお前以外守る気なんかねぇ」


吐き捨てた副会長に同意したい。オレもお前如きに守られるなんて御免だ。反吐が出る。
ついでに、『そ、そんな事言っている場合!?』と声を荒げつつも頬を染める文月にも言いたい。お前こそラブコメを繰り広げている場合?と。


「……とんだ茶番だねぇ」


隣で沈黙し傍観していた男は、低く呟いた。
ゾッとする様な凄艶な微笑も声音も、オレしか気付かなかった様だが。


「…………」


オレはぐるりと辺りを見回す。


萎縮する親衛隊。青褪める二見。
オレを睨み付ける書記と会計に、ラブコメを繰り広げる文月と副会長。
そして物騒なオーラを撒き散らす風紀委員長。


嗚呼、馬鹿馬鹿しい。
誰でもいいから早いとこ、この事態を収拾して欲しいと、オレは心の中で吐き捨てた。


その願いが通じたのだろうか。


「……何をしている」


セリフはさっきの風紀委員長とほぼ一緒なのにも関わらず、まるで違う印象を受ける低い声がかけられた。


年頃の少女のみならず、夜の町の百戦錬磨な美女らさえも腰砕けになりそうな、低く艶のある美声。
現れたのは、一分の隙も無い様な整い過ぎた美貌の男。


漆黒の髪に、鋭い眼光を放つ黒檀の瞳。一点の曇りも無い日本刀を思わせるこの男こそ、如月 節(キサラギ セツ)。
この学園の頂点に君臨する生徒会長だ。


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あきゅろす。
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