Others 6 積み重なり溜まっていく汚泥のように、 オレの中の妬み、嫉み、恨みは、日を追う毎に増えてゆく。 いつか雨音に取って代わる日を夢見てオレは、努力に努力を重ねた。 その鬼気迫る様相は、妄執に捕われた悪鬼のようだったに違いない。元より少なかったオレの周囲の人間は段々と数を減らしていった。 …だが、そんなオレの願いは、思いもよらぬ形で、アッサリと叶う事となる。 『オレが、…後継者?』 呆然と呟くオレに、父は難しい顔付きで、 だがしっかりと頷いた。 オレは確かに出来得る限りの力は尽くしている筈だが、雨音にはまだ及ばない筈だ。忌々しい事この上無いが。 何故、突然。 その疑問の答えにオレは、またしても屈辱を味わされた。 雨音は、自らの意志で、地位を捨てたのだ。 ――許せない。 オレがなりふり構わず藻掻いて足掻いて、それでも手に入らないものを、 お前はアッサリと捨てるというのか。 何の価値も無いものだと、オレの努力ごと嘲笑う気なのか…!! 『それに伴い、雪はお前の従者となる。』 『…っ、』 あんなにも、焦がれたもの全てが、自分の力では無く他人の気紛れで投げ寄越される。 オレは何度アイツに、敗北せねばならないのだろう。 ……ああ、でも 雨音よ。 『良いな?雷。』 『…謹んで、お受け致します。』 いらないと言うのならば、お前の持つ全て、オレが貰い受けよう。 お下がりだろうと、二番煎じだろうと構うものか。 但し、絶対に返しはしない。 もうオレのものだ。 その手に帰らない事を、悔やむがいい。 『…以上が、明日のご予定となります。』 『……………。』 渇望した少年は、あれからずっとオレの隣に在る。 スイ、と手を伸ばせば、白い頬に触れられる。 拒まれる事は無く、安曇雪は、なんでしょうか?と綺麗な笑みを浮かべた。 『……雪。』 『はい。』 近い距離なのに、酷く遠い。 触れている筈なのに、まるで見えない膜に阻まれているかのような、もどかしさを感じる。 『…………。』 雨音に向ける様な、心からの笑顔でなくとも構わない。 怒りでも、悲しみでも、なんでもいいから、どうにかしてその笑顔の仮面を外したかった。 だから、 『雪…オレと付き合え。』 傲慢に、そう言った。 『……お付き合い、ですか?』 『ああ。オレのモノになれ。』 『……私は雷様の従者ですが。』 貴方のものですよ、既に。と言外に匂わされた。 一見従順な様に、オレは酷く凶暴な気分になる。 そうやって、オレから逃げるのならば、 逃げ道全てを、塞いでしまおう。 『…なら、抱かせろ。』 『…………………。』 . [*前へ][次へ#] [戻る] |