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Others
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「…以上の理由から、書記を辞任させていただきます。」

「………………、」


淡々とした説明を終え、漸く一番言いたい事を言えたオレが見つめる先、


副会長に就任したばかりの、安曇 晴は唖然とした表情をしていた。


安曇 晴は、安曇 雪の双子の弟であるが、顔の造り以外は全く似ていない。
…いや、顔の造りもあまり似ていないな。


淡い栗色の髪は染めてあるのだろうが、そんな問題じゃなく、安曇 雪は知性や自信が外見にも現れていたし、もっと思慮深い瞳をしていた。

同じ顔だからこそ、余計その差が出る。


同じ顔でも、コレは綺麗だと思えない。


「えっ、と…」


理解していない顔の安曇 晴に、オレはもう一度繰り返す義務も無い、と無言で辞表を机に置き、踵を返した。


「ち、ちょっと待って!」

「……………。」


慌てて回り込んだ安曇 晴を、オレは冷たい目で見る。


だが安曇 晴は怯んだりせず、真っ直ぐにオレを見て、必死に懇願した。


「考え直してくれないかな…!?僕、兄さんみたいに優秀じゃないし、不器用だけど…でも頑張るから!!だから、支えて欲しいんだ…。」

「何故?」

「……えっ?」


端的に問う。

目を丸くする安曇 晴に、オレはもう一度疑問をぶつけた。


「何故、オレが貴方を支えねばならない?」


出来ないけれど、一生懸命やります。

…それに、何の意味がある?


世の中は結果が全てだ。経過を見て評価してくれるのは、小学生までだろう。


出来ないなりに頑張れば、全ての人間が許すなど、勘違いも甚だしい…ましてや支えろなど、傲慢にも程がある。


「オレは、何の得にもならない事に費やす時間など持ち合わせていない。他をあたれ。」

「……っ!!」


泣き出しそうに顔を歪めた安曇 晴を放置し、オレは再び歩き出した。



…ガチャ、バタン。


「…………貴方も、聞いていましたね?」

「……………。」


扉を開け、生徒会室を一歩出ると、微動だにせず、此方を睥睨する男がいた。

気付いていたので驚きは無い。


壁に凭れた男の目は、酷く暗く淀んでいた。


「短い間でしたが、お世話になりました…会長。」


生徒会長――天堂 雷に軽く頭を下げ、オレはそのまま彼の前を通り過ぎた。


「…転校するというのは、本当か。」

「…はい。」


ふいに投げて寄越された問いに、オレは足を止める。


「アレを追うつもりか。」

「はい。」


侮蔑と憧憬が入り混じったかのような、苦く複雑な声に、オレはハッキリと肯定する。


振り返り、赤銅色の瞳を見据えながら、オレはゆっくりと口角を吊り上げた。


「真に望む主人の元では、あの人がどれ位輝くのか…オレはそれが見たい。」

「…………っ、」


心の深くを抉られた様な顔の会長に、トドメとばかりに、

此処では一生見られませんので、と付け加え、


オレは今度こそ振り返えらずに歩きだした。



あんな連中に構っている暇など無い。
さっさと転校し、あの学園でも生徒会に入れるよう、手を尽くさねば。

今期は無理でも、来期は必ず。



そして、間近で見るのだ。


真に輝く、白雪を。
(嗚呼――彼は本当は、どんな顔で笑う人なんだろう?)


END

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