Others
果報を待つ彼の話。
※会長視点です。
「会長。」
オレが風紀室に乗り込んだ時より、遡る事、30分前。
生徒会室を出たオレの後を追うように出てきたのは、副会長と庶務だった。
「何だ?」
オレが足を止め振り返ると、副会長は、王子然とした美貌を、難しげに歪める。
「…月村は、何かあったんですか?」
「…どうしてそう思う?」
「どうしたもこうしたも無いよ!空元気バレバレじゃないっ!」
美少女顔負けな可憐な顔立ちの庶務が、割って入り、言葉を荒げた。
「そうです。…あんな顔は月村らしくない。」
「…………。」
普段月村に厳しい筈の副会長は、心配げに顔を曇らせた。
…まぁ、厳しい、といっても、世話焼きな母親が子供の躾をしているような感じだが。
ウチの生徒会は、基本仲が良い。
そして、この個性的なメンバーが、喧嘩しながらも上手くやっていけているのは、月村の力が大きい。
オレは自分勝手に突き進むところがあるし、
副会長は、オブラートに包めず、厳しい物言いをする事がある。
庶務は飽きっぽく、我が儘なところがあり、
今は中で月村と仕事をしている書記は、口下手。
ぶつかり合いはしょっちゅう。
でもそれを治めてくれるのは、いつも月村だ。
互いの言い分を聞き、偏らずに良い所悪い所を指摘し、押し付けがましくなく、仲直りさせてくれる月村が、オレ達は全員大好きなんだ。
…オレは多少…いや大分、不埒な方向に愛が向かってしまっているが、他の奴は純粋に仲間や友として、月村を大切にしている。
だからオレは…勝手ながら、コイツらには話しておいた方がいい、と思った。
これから先、頼る事もあるだろうと。
「…月村は、風紀の風祭と別れた。」
「…はっ?」
「…そもそも、付き合ってた事さえ初耳なんだけどっ?」
同じように唖然とした二人に、オレは簡単に説明をする。
付き合ってからまだ10日程度しかたっていない事と、
別れる原因は、風祭にある事を。
二人は黙って聞いていた。
だがその表情は、だんだんと険しくなっていく。
月村を大切に思う二人は、まるで自分がされたかのように、悔しそうに顔を歪めた。
「…許せません。」
「うん、同感だよ。…ウチの月ちんに、舐めた真似してくれんじゃん。」
激しい怒気を放ちながら、二人は頷き合う。
「あの堅物に手を出させるなら…十中八九、風紀の副委員長の仕業だね。」
「…そうなのか?」
思わぬ情報に目を瞠るオレに、庶務は美少女顔に似合わぬ冷笑を浮かべた。
「あそこの副は、風祭に惚れてるっぽいから。………あんのクソビοチ…ピーをピーして犬にピーさせてやろうか…!!」
一見虫も殺せぬ美少女が、物凄い放送禁止用語を連発した。
「温いですよ…風祭共々、もっと悲惨な地獄を見せてやりましょう。」
お綺麗な顔でえげつない方向にヒートアップしている二人に、オレは嘆息し、ストップをかけた。
「…取り敢えず、待て。事実関係は、オレが今から確認してくる。…その間、月村を頼んだ。」
「分かりました。」
「もっちろーん!」
敵に回すと怖いが、味方ならば頼もしい事この上ない。
二人…いや、書記を含め、三人に任せ、オレは風紀室へと向かった。
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