Others 5 「もう二度と、プライベートでアイツに関わるな。」 一片の温度も感じないような冷えきった声音が、淡々とオレを断罪する。 彼を信じきれなかったオレには、その資格は無いのかもしれないが…それでも頷けない。 オレは彼に会いたい。 そして、 「…謝りたいんだ。」 擦れた情けない声で、オレは食い下がった。 そんなオレに花菱は、侮蔑の視線を向けた。 「何をだ?…ソイツを抱いてすみませんでした、とか?」 「!!!」 ソイツ、と副委員長を顎で指す花菱に、オレは息を詰める。 嫌な想像に、背筋を冷たい汗が辿った。 違う、そんな筈無い、と否定しながらも、 それならば別れを切り出された理由に説明がつく、と絶望の中思い至る。 「…クソが。汚らわしいのはテメェらだろうが。つまんねぇモン月村に見せやがって。」 吐き捨てるような言葉に、最悪の予想は肯定されてしまった。 月村、月村、月村…!!! オレは君を、最低最悪の形で裏切ってしまった…!! 「…ぅあ、ぁあああっ!!!」 喉の奥からせり上がってくる狂気。 オレは吠えるように慟哭した。 愛しい彼を、もうこの手には取り戻せないんだ、と、オレは死にたいくらいの後悔が押し寄せる。 「風祭様っ!!!」 「触るな…!!!」 「…っ、」 「…触らないで、くれっ…!!」 駆け寄ってきた副委員長の手を拒み、オレは己の頭を抱えるように咆哮した。 分かっている。 これはオレの自業自得、副委員長だけのせいでは無い。 …それでも、 オレから月村を奪った彼を、憎みそうになってしまった。 今触れられたら、オレは何をするか分からない。 「…そうやって、苦しめ。謝って許されようなんて、甘ぇんだよ。……………………アイツはもっと、痛かったんだ。」 花菱の断罪を受けながら、オレは自らの愚かさを呪った。 柔らかに笑む彼が、遠ざかる。 月村、 オレは君を大切にしたいと思った。 甘やかして、愛しんで、 誰よりも幸せにしたいと思っていた。 …おこがましいな。 結局は、 君との信頼関係も、 愛しんでいた恋も、 オレの臆病な心が、壊したんだ。 (素直に、ただ真っ直ぐに、愛している、と言えばよかった。) (君が――そうしてくれたように。) END [*前へ][次へ#] [戻る] |