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Others
方向音痴な君の話。
主要人物

月村(ツキムラ)
若干チャラい会計。
極度の方向音痴。

花菱(ハナビシ)
自信家な会長。
恋愛は慎重派。

風祭(カザマツリ)
ストイック(?)な風紀委員長。

鳥居(トリイ)
鬼畜眼鏡な物理教師。

―――――――――――――――




「……………、」

「…?おい、どうした?」


ヨロ、ともつれた足を引き摺るように生徒会室に辿り着くと、今迄書類に落としていた視線を上げた花菱(ハナビシ)会長は、オレを見るなり眉をひそめ、そう声をかけた。


「……………、」


珍しくも気遣わしげな声に、オレは何も返せず、ヨロヨロした足取りのまま、近くのソファーに崩れるように座る。


会長はガタン、と大きな音をたてて椅子から立ち上がると、直ぐ様オレの方へ来てくれた。

オレの向かいではなく隣に腰掛け、覗き込んで来る会長の厳しい顔付きには、心配と焦燥が分かりやすく浮かんでいる。
天上天下唯我独尊を地でいく会長にそんな顔をさせるなんて、オレ大分酷い顔してんだろーなぁと頭の隅で思った。


だが予想に反し、会長の、光の入り方によってはオレンジに見えるライトブラウンの瞳にうつるオレは、思い詰めたような難しい顔をしていたが、悲壮感は然程無い。


まぁ、そうか。


悲しい、というよりは、今は疑問や戸惑いのが断然デカい。


「……月村(ツキムラ)、何があった?」


オレを驚かさないように優しい声で問う会長に、オレは混乱したまま口を開いた。


「…えっと……上手く言えないんだけど、始めようと思ったら終わった…?…いや、違うなぁ…寧ろ始まったと思ってたの、オレだけだったとか…?」

「…………全く意味が分からん。」


会長はため息をついた後、落ち着け、とオレの頭を撫でた。セットが乱れる。


「お前は方向を見失いやすい。話も、道も。…最初からキチンと話せ。」


確かにオレは話の腰を折るのと、道に迷うのが得意(←?)です。
方向音痴は祖母→母→オレと、完全なる遺伝なんで、ちゃあんと自覚済み。

おっと。また話がズレそうになった。


えっーと、そうだ。最初から話すんだったよね。


「…じゃあ最初っから話すと、今日会長に、オレ恋人が出来たって報告しようと思ってたんだよね。それで、」
「待て。」


最初から話せと言うから話し始めたら、冒頭からストップを食らった。


「何?まだ話は始まったばっかりなんだけどー?」


話を中断され、若干不機嫌さを声に滲ませるが、会長はその一千倍位不機嫌そうな怖い顔をしている。


「なんつった、今。」

「?…だから、会長に、恋人出来たって報告しようと、」

「……恋人、だぁ?」


低い声で凄む会長を、オレはハテナマークを飛ばしながら見る。
不良やチンピラが裸足で逃げ出しそうな極悪顔だが、不思議と怖くない。たぶん、頭が現在飽和状態だからかも。


「聞いてねぇぞ。」

「だーかーら!報告しようと思ってた、って言ってんでしょうが!!会長が最初から話せって言ったんだから、話の腰折らないでよね。」


オレが半ギレ状態で睨むと、会長は妖しい笑みを浮かべた。目が据わってて怖い。


「…いいぜ。取り敢えず聞いてやろうじゃねぇか。話せ。」


おぉ。話すとも。


「で、会長に報告する事を、恋人にも言っておこうって思って風紀室に向かったんだけど、」
「待て。」


来ました二度目のストップ。


「会長、いいかげんにしてよー。」

「お前こそいい加減にしやがれよ。風紀室って何だ。」

「え。会長、風紀室知らないの?風紀室ってのはぁ、此処出てすぐの階段を降りて右に曲がって直ぐの渡り廊下を…」
「違ぇよ。そんな意味じゃねぇし、風紀室への行き方も違ぇよ。」
「マジでか。」


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