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△な応用編


「…………………。」


「……か、角田先輩……………。」

「…んだよ?」

「…ち、近いです…。」


小さく呟いてマドちゃんは、顔を真っ赤にして俯いた……菱の腕ん中で。


そうなんや。
奴らの今の体制を説明するとやな、

まず屋上の落下防止のフェンスに背を預け、胡坐をかく菱。
で、その膝の上にマドちゃんをのせて、尚且つ腹に両腕を回し、完全に抱えこんどる。


…何処の馬鹿っぷるやっつー話。


「…………、」


オレは、でっかいため息をついて、やけに青い空を見上げた。


思い返せば、2週間前。

急に菱がマドちゃんにベタベタするようになった。


今までは、菱の後をマドちゃんが追っかけまわす、ってのが標準仕様やったんやけど。


今では…


「…これ食う?」

「あ、はいっ!そのチョコ新作ですよね。」

「ああ。お前CM見て食いてぇっつってたろ?…ほれ、あーん。」

「!!…えと、自分で食べれます…んぅ!?」


あ。
口移ししやがったわ。

拒否られムッとした菱は、チョコを自分で含むと、マドちゃんの顎を掴み、強引に口付けた。

最悪や。アイツ。


意外と常識ってもんを持っとるマドちゃんが、人前でチューなんて許容範囲外やって分かっとるやろうになぁ。


「…美味ぇ?」

「……わ、かりませっ……」


おまけとばかりに、ペロリ、と唇を舐められ、マドちゃんは湯気が出そうに真っ赤になっとる。


…ちぃとは手加減してやらんかい阿呆が。


本気になったから、全力で落とす言ぅとったが、

オレから見れば、何を今更、や。


お前はとうの昔…それこそ出会った頃から、マドちゃんを特別扱いしとったわ。


長身の黒髪の男前を見ながら、オレはなんともゲッソリした気分になっとった。


…そういやあの頭も、マドちゃんの為やったね。


マドちゃんに出会った当初、菱はその不良全面押しな容貌に良く似合った真っ赤な髪をしていた。

まるで血のような紅の髪から、赤鬼と呼ばれてもいたくらいやから、アイツにとってはトレードマークみたいなもんや。


それに憧れたマドちゃんは、ある日髪を真っ赤に染めた。


あの時の菱の顔は、見ものやったな。


口を開けたまま固まった間抜け顔は、口を引き結んだかと思うと、マドちゃんの後ろの襟首を掴み、『薬局行くぞ。』と告げた。


このままではマドちゃんが黒いカラーリングの餌食になる思うたオレは、こう助言したった。


『それスプレーやで。』と。


まぁぶっちゃけオレの入れ知恵やから。あは。


それに気付いた菱は、そりゃ恐ろしい形相やったが、それよりマドちゃんの髪を戻すのが先だと思うたんか、無言で出ていった。


数十分後、
いつもはピョンピョン跳ねとるマドちゃんの髪は、洗い立ての子犬みたいにヘタリとした黒髪になっとって。


次の日、菱は、何年かぶりに黒髪に戻っとった。


…ただの後輩ん為に、トレードマークやった赤髪捨てるか?


その時点で、

あ、コイツ、ベタ惚れや。とオレは思うとうたんやが…まさか自覚無しやったとは。


「…苦労するで?マドちゃん。」


ため息混じりのオレの言葉に、マドちゃんは不思議顔で小首を傾げる。


「三角先輩?」


マドちゃんがオレを気にした途端、菱は機嫌が悪ぅなった。

なんつー心が狭い。


ほんま、苦労するわ。


それでもマドちゃんはきっと、困ったように笑いながら、この面倒臭い男を受け入れるんやろな。


…あー羨ましい。

オレもマドちゃん欲しいわ。


いっそ横槍入れてかき回したろーか?


…まぁ、無理やけど。



菱+マドちゃん=馬鹿っぷる
(上記の式を覆すには、)
(オレはこの二人が好きすぎるんや。)


END

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あきゅろす。
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