Others
略奪者の恋
「…煉に、気になる子が出来た、らしい。」
…それを聞いた時オレは、憤りを感じた。
だが同時に、歓喜したんだ。
教室にいない彼を探し、オレが屋上へと辿り着いた時、
いつもはピシッとして、全く隙が無い颯は、ぼんやりと空を仰いでいた。
なにかあったか、なんて聞かなくても大体分かる。
颯がこんならしくない顔をする時は、大抵アイツ…生徒会長関連の話だから。
初めて会った時から、オレはずっと颯を見て来た。
完璧そうに見えて、不器用なところも
実は優しくて、真っ直ぐなところも、
頑固なとこも、ネガティブなとこも、
――臆病なところも、ぜんぶ。
だから分かる。
アイツが好きなのは、お前だよ、颯。
オレと同じ目で、アイツはお前を見てるから。
「そんな子を選ばれては…気の迷いだなんて、言える筈無い。」
哀しそうな目で笑うお前に、一言、
違う、と教えてやればいい。
――嗚呼、でも
出来る筈、無い。
「…もう、潮時かもしれない。」
お前がアイツを諦めてくれる日を、
オレはずっと、待っていた。
「……なら、オレと付き合う?」
「…え?」
出来るだけ、軽く聞こえるように心掛けたが、オレの声は予想を裏切り、やけに真剣な響きを持ってしまった。
呆然とした颯に、いつものようにヘラリと笑む。
「…だって悔しいじゃん。当て付けっつーか…オレだってお前の事なんて、なんとも思ってないんだぜ?って見せつけてやろーよ。」
言い訳がましい言葉は、オレらしくなく若干早口。
格好悪ィ。
でも颯は、からかう事も訝しむ事も無く、直ぐに首を横に振った。
「オレはお前を、そんな安い位置には置かない。」
「…っ、」
当て馬でもいい。
咬ませ犬でもいい。
そう思っていたのにお前は、真っ直ぐな目でオレを見る。
オレを見て、大切なんだ、と真っ直ぐに伝えてくれる。
ああ、どうしよう。
すき。すき。
好きなんだ。
お前が、大好きなんだ。
おかしいくらい、お前にイカレちまってるんだ。
お前が手に入るならオレは、
どんな事でもする。
「…いつも、悪いな。大地。…………お前には、感謝している。」
「馬ぁ鹿。話聞くくらい、なんてことないでしょ。寧ろもっと頼れ。……颯の為なら、なんだってしてやるよ。」
自分の肩口へと颯の頭を引き寄せ、オレはそっと囁いた。
なんだってする。
なんだって。
だからもう、
この片恋に、
ピリオドを打とう。
(アイツの元には、帰さない。)
END
※大地目線の『片恋の終止符』→奪うこと。
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