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「…それは、許される、べき事じゃ、ないし…簡単に、償いが、出来る事じゃ、ないと…思います。……………オレは、もう…書記には、戻れない。」
「…そうだな。」
漸く会長は、一言だけ、そう返した。
哀れみも怒りも感じさせない、静かな声で、端的に事実だけ述べる。
…遅すぎたのだ。
彼は、会長の信頼も、一般生徒の信頼も、失ってしまっている。
信頼は、失うのは容易いが、回復するには、とても時間と努力が必要になるから。
それの回復を待っていては、生徒会の…そして学園の業務が立ち行かなくなる。
残酷だろうと、無慈悲だろうと、会長は、彼を切り捨てなければならない。
トップとして。
「……それに、異論は、ありません。…オレは、それだけの事を、した。………………………………………………ただ、……貴方に一言だけ、伝えたかった。」
「………何だ。」
だから会長は、罵倒も恨み言も、ただ受けとめる。
それも、役目だと言わんばかりに。
言い訳も、弁解も、無い。
オレは、この人のこういう所は、とても得難い才だと思う。
単純に、好きだとも、思う。
…でもね、会長。
人は、成長する生き物なんです。
「………ごめんなさい。」
「………………。」
神妙な顔を、情けなく崩し、ペコリと頭を下げた御厨先輩を見て、会長は切れ長な目を、丸くした。
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