Others
18
オレも、驚いた。
さっきまで叶は、不満ありありの顔だったし、大切な隊員達を貶されて、怒っていた筈なのに。
今の叶は、そんな不平不満を口にするでもなく、感謝だけ伝えた。
「…人も人前も苦手なのに、黙々と仕事をこなし、愚痴の一つもこぼさない貴方を、私達は尊敬しておりました。力になりたいと願っておりましたが、寧ろ不快な思いをさせてしまっていた事、申し訳ありません。」
「…………。」
畏まった口調で、叶は謝罪までする。
「もう貴方を煩わせる事は無いでしょう。…これからは前書記として、至らぬ後進である私の指導をお願い致します。」
「…………、」
黙って見守っていたオレは、その言葉を脳内で繰り返し、もう一度目を瞠った。
…それって、もしかして。
同じように、その言葉の意味に気付き、戸惑う書記に、叶は胸を張るように堂々とした態度で宣言した。
「橘会長より、次期書記の指名を受けました。…叶千里と申します。」
改めて名乗る事に、線引きと決別の意を感じた。
以後、お見知りおきを。
そう締めくくる叶に、書記…いや、前書記は、言葉もなかった。
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!