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拍手A 静視点。


《凛と静のメール事情@》

それは一通のメールで始まった。




「…ん?」

静は、風呂上がりの濡れた髪をタオルで拭いながら、携帯を手にとった。

新着メールあり、のランプが点滅している。


…誰だ?

ベッドサイドに腰掛け、携帯のフラップを開けると、後ろから腰に、細い手が巻き付いて来た。

「…どーしたの?静様。」
女のように高い、媚びた声で擦り寄ってくるのは、今日のお相手。
男子寮には(連れ込まない限り)女の子はいないので、この子も当然、美少女じゃなく美少年。
最近出来た新しいセフレ。


「んー?ちょっとメール?」

面倒くせ。と思いつつも適当に返事をした。
ちなみに面倒くせーのは、メールではなくセフレ。

一回二回ヤッた程度で、すっかり恋人きどり。
こーゆータイプは後々面倒そうだし、さっさと切っといた方が無難かなぁ…。


「後にしましょうよ…それより…」

オレが気分を害している事にも気付かず、益々体をあからさまに押し付けくるセフレ。
…盛りのついた雌猫のようだ。


「ごめんね?大事な件かもしんないから。」

セフレの手をさり気なく外しながら、オレはメールを開けた。

あれ?二件ある…。新しい方は……。


「………!!」


ガバッ!!
「きゃっ!?」


静は思わず立ち上がった。

FROM: りっちゃん

SUBJECT: おはよー。
------------------------
休みの日だし、寝てたらごめんね?今何してる?




「………。」

……今?


チラリ、と後ろを振り返ると、視界に広がるのは、寝乱れたベッドとマッパのセフレ。

時計を見ると11時。


「………。」

昼日中から、盛ってましたー。……なんてりっちゃんに言えるワケねぇーー!!

どどど、どーする!?オレ!!


@ 正直に言う。
はい、却下。
A 適当な嘘をつく。
…却下。りっちゃんに嘘なんてつきたくない。
B 見なかった事に。
却下!絶対却下!!


…あれ?手札終了??

アホか!?オレっ!!


「…し、静様?」

携帯片手に挙動不審のオレに、セフレが恐る恐る声を掛けてくる。

…つか、まだいたの?

「あー…ごめん。ちょっと立て込んでるんだ。今日は帰ってくれる?」
「え、あの…っ?」

何か言いかけるのを制して、最低限の服だけ着させ、後の荷物は手に押しつけて、半ば強制的に退去させる。


我ながら最低だとは思うが、今はそれどころじゃない。

………うーん。

考え考え、ポチポチとメールを打つ。


TO: りっちゃん

SUBJECT: 起きてるよ(^O^)/
------------------------
オハヨ〜(^-^)
ちゃんと起きてるよ?
ちょっと体動かしてたから、シャワー浴びてました☆


「…………。」

送信ボタンを押したまま、静は頭を抱え、その場にしゃがみこんだ。


…死ね自分。

嘘は言ってない。…言ってないが、何だこの猛烈な罪悪感。


チャラーン♪
ビックウッッ!!


「……。」

そろっとメールを開けてみる。


FROM: りっちゃん

SUBJECT: おお!
------------------------
元気だねー。
しずかちゃん、バスケとか似合いそう。



「………。」

殺してくれ。


何かスゲー自分が、下衆く見えてきた…いやまぁ、マジ下衆いんだろーけど。


バスケ…やれば確かに結構上手いと思う。
今からやればいい!?間に合う!?(アウトです)


チャラーン♪
「?」


FROM: りっちゃん

SUBJECT: 本題。
------------------------
一番重要な事聞き忘れた。しずかちゃん、甘いもの大丈夫??


「甘いもの…?」



TO: りっちゃん

SUBJECT: モチロン☆
------------------------
大好きだよ〜o(^-^)o


チャラーン♪


FROM: りっちゃん

SUBJECT: RE.モチロン☆
------------------------
よかった。
今日、ドーナツ系が食べたくなって作ったんだけど、作りすぎちゃったんだよね。
よければもらって?サーターアンダギー。


「っ、…。」


TO: りっちゃん

SUBJECT: 欲しい!
------------------------
もらう!絶対欲しい!



チャラーン♪



FROM: りっちゃん

SUBJECT: RE.欲しい!
------------------------
じゃあ、30分後、この前の場所で。



ガタ、バタン!


りっちゃんに『了解!』とだけ返して、再び風呂場に直行。

情事の後なんか、微塵も残さないように!


りっちゃんには、綺麗な体で会いたいんだ。



…デート前の乙女か。
はたまた、浮気を隠そうとする亭主か。


判断に困る所だが、斎藤凛に夢を見すぎているこの男が、一件目の未開封メール…俺様生徒会長様からの召集令状に気付くまで…後、20分。

END

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