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「…別に、お前は謝る事ねぇだろ。」


黒さんは、そう言って笑った。


「…でも、心配かけちゃったし。」


飛び出しちゃって、ごめんなさい。とペコリと頭を下げると、黒さんは、空いた方の手で、オレの髪を撫でた。


「それも、オレがいらん事言ったからだろ。」


「確かに。その点は謝りませんから。」


スッパリ言い切ると、黒さんは、目を丸くした。


そして、吹き出す。


「…そーだな。悪かった。」


クックッ、と肩を揺らしながら、黒さんは、そう言った。


笑い事にしてるけど…。
オレ、本当に傷ついたんだから。


頬を膨らまし、ジトッと睨むと、黒さんは、漸く笑いをおさめた。


「…大した事じゃない、なんて、言わないで下さい。」


「…凛。」


繋いだ手を、ぎゅうっと握ると、同じだけ強い力で、握り返してくれる。


「オレにとっては、何より一番、大切な日です。」
「!」



昨日という日が無かったら、オレは貴方に会えなかった。


この暖かさも知らないまま生きるなんて、今のオレは、怖くて、想像する事も出来ない。


黒さんは、何も言わず、オレをじっと見つめていた。


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