Sub エゴイストの恋 カシャン。 目の前のフェンスに、指を掛ける。 スゥ…、と深く息を吸い込み、手に力を入れた。 遠く響くサイレンと、バイクの排気音とタイヤが滑る音に耳を澄ませながら、一気にフェンスを登る。 ガシャッ…。 テッペンに足を掛けたオレの頭上高くに輝く月は、やけに大きく…蒼く輝いていて。 オレは細く息を吐き出した。 ヒラリ、と飛び降りながら、苦い思考に、顔を歪める。 ―――何故、あの男に遭遇する夜は、いつだって、蒼い月が出迎えるんだろう。 申し合わせたように、幾度も。 まるで。 決闘か、 逢瀬の合図のように―――。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |