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君のいない季節[黒さん視点]
※凛が学校に入学したあたりの時間軸。ひとりぼっちな黒さん。
ザァアア…
桜並木の間を、一陣の風が通り過ぎる。
舞い散る桜吹雪の中、オレは足を止め、空を仰いだ。
「………。」
季節は、いつの間にか、春。
オレの手元から離れてしまったアイツが、好きな季節。
薄桃色の、この花も、
柔らかな風も、
突き抜けるような蒼天も、
みんな、アイツの愛しんだモノ。
「………。」
ふ、と視線を隣に落とす。
誰も、いるわけは無いのに。
…アイツが、いる筈もないのに。
こんな日は、思い出してしまう。
ニコニコ笑って、楽しそうに、隣を歩くアイツを。
機嫌良くつむがれた、鼻歌のメロディを。
「……………。」
フゥ、と自嘲気味に嘆息して、オレは再び歩きだした。
アイツに聞かれたら、笑われるかもな。
…こんな年の男が、
――寂しい、なんてな。
END
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