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泥沼
※第三者視点です。
「…………。」
一人残された少女は、俯いたまま、ぎゅうっと自分の体を抱き締めた。
「…撫子ちゃん?」
「っ…、」
後ろから控え目にかけられた声に、彼女は顔をあげる。
「…大丈夫?顔、真っ青だよ?」
振り返った先に、心配そうな顔で此方を気遣う青年を見付け、彼女は顔を歪ませ、
「…っ!!」
「っ、と…!?」
声も出せぬまま、その胸に飛び込んだ。
華奢な体を抱き留め、静は困惑したように眉をひそめる。
何処に人目があるか分からぬ場所で、こんな密着していては、彼女の立場を悪くするかもしれない、と、その細い肩を押し戻そうとしたが、彼女の体が震えている事に気付き、静は、驚かさないように静かに声をかけた。
「………何か、あった?」
「……し、ずかさん…っ、」
「!!」
洩れる嗚咽に、彼女が泣いている事を知り、静は躊躇いつつもそっと、華奢な体を抱き締めた。
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