Main
絆
「…ところで、何で日下部がいるの?」
しずかちゃんは、気を取り直したように、日下部先輩に訊ねた。
まぁ今日、平日だし。
お見舞いするにしても、何で今日?って普通は思う。
でも、オレは何となく想像がついていた。
日下部先輩は、会長の…御門暁良の、側近。
ならば、
「…暁良様の代理だ。代わりに行って牽制してこいと命じられてな。」
「……………。」
嘆息してから告げられた日下部先輩の言葉に、しずかちゃんは軽く目を瞠る。
「…そりゃまた…珍しいね。つか、オレがいない事に気付いてたんだ。」
唖然としずかちゃんは呟いた。
そのシンプルな本音を聞いて、日下部先輩は眉をひそめる。
「…確かに、あの方は気紛れで、人を人とも思わぬ扱いをする、人間としては最低部類な人だが…」
え、ちょっと待った。
それ、フォローだよね?フォローに繋げるんだよね??
余りの言い様に、オレがハラハラしてしまいそうだ。
だが、日下部先輩はいつも通りの真面目な顔に、ほんの少し優しい色を混ぜて続けた。
「だかな、上に立つ者としての責は弁えておられる。…少なくとも、己で選んだ側近を、気に掛ける事くらいするさ。」
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!