Main 3 しずかちゃんは瞠った目を細め、オレの手をギュッと握り返し、泣きそうな顔で笑った。 …スゥ、と深めの呼吸をし、真っ直ぐにお父さんを見る。 激昂しかけていたしずかちゃんが、直ぐ様理性を取り戻した事に、お父さんのみならず日下部先輩も驚いていたが、それには気を留めず、しずかちゃんは口を開く。 「…兄上は、オレと違って優秀です。当主として相応しいのは、オレではない。」 静かな声音で、けれどキッパリとしずかちゃんは言い切った。 「……そうだな。確かに、尚久は優秀で、文句のつけようの無い、出来た子だよ。」 お父さんは、苦笑を浮かべ、そう呟く。 けれど、しずかちゃんが『なら…』と口を開こうとするより先に、だがな、と続けた。 「だが、静。…私は父としてでは無く、一華道家として、お前の才能が埋もれる事が、惜しい。」 「………………。」 しずかちゃんは、唇を引き結び、僅かに俯く。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |