Main 2 尚久さんの言い分は、最もだ。 一時間程度、幼児ならともかく、高校生の少女ならば、心配するのは過保護というものだ。 …健康な少女ならば。 一番近い場所にいる桜子さんの様子を見る限り、撫子さんは、誰にも何も告げずに、一人で何処かへ行ってしまうタイプじゃない。 最低限、桜子さんには、言っていくんじゃないだろうか。 それに、あの触れれば折れてしまいそうな、華奢な体付きと、広間での蒼白な顔を思い浮べると、オレでさえ心配になる。 …なのに何故、婚約者である尚久さんは、冷静そのものなんだろう。 「僕も探してみるよ。見つけたら、君達が探してくれていた事を伝えるから。」 「…お願いします。」 頭を下げる桜子さんの背を支えながら、オレは尚久さんを盗み見る。 垢抜けた小綺麗な顔に、優しげな笑みを浮かべた尚久さんは、婚約者の姉をも気遣う好青年に見えた。 心配そうに表情を曇らせる彼に、不審な部分は見つけられない。 …けれど、何故かオレは、そんな彼に違和感を感じた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |