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※静視点です。


言いたい事は、それだけか。そう問われ、オレは何も返せなかった。
無表情の日下部を、ただ見返すだけ。


日下部は数秒無言だったが、まるで待ち時間は終わったと言わんばかりに目を伏せた。
僅かに下がった眼鏡のブリッジを中指で押し上げた日下部は、踵を返す。


「……他には無いようだな」


その声は平坦だったが、ありありと蔑みが透けて見える。
馬鹿が。そう言葉無く告げられた気がした。


「……っ、」


無様なのは百も承知。誰に言われずとも、自分が一番知っている。
いっそ括り殺してやりたい程に。


でも、冷静になんてなれない。なれる筈がない。


「オレはっ……」


叫びはしなかった。擦れた声は己のものとは思えない程に弱々しく、ともすれば遠い雑音にかき消されてしまいそうに小さかった。
けれど日下部は足を止める。


「……オレは、」


日下部の後ろ姿を見ながらオレは、まるで独り言のように呟いた。


「りっちゃんを……悲しませたくなんかないんだよっ……!」


そう、告げた次の瞬間


――ガンッ!!!

「…うぐ、!?」


一瞬でオレとの間合いを詰めた日下部に、胸ぐらを掴み上げられ、背中を壁に叩きつけられた。
息が止まる。容赦の無い手は尚も気道を押し、酸欠に拍車をかけた。


「黙れ」


鋭い声と同じ位、鋭い視線が至近距離で突き刺さる。
さっきまでの無表情、冷静沈着な様子がまやかしだったかの様に、日下部は分かりやすく激昂していた。


「悲しませたくないだと?よくその口で言える。お前が、オレ達が何をしてきたか分かっていて言っているのか?」

「……っ、」

「オレ達は、誰を探していた?誰をかぎ回り、追い詰めていた?……最終的に、暁良様と彼を引き合わせてしまったのは、一体誰だ?」


日下部はオレが目を逸らしていた事を、容赦無く眼前に突き付けてきた。


彼を、りっちゃんを追い詰めたのは、オレ。
オレが家の騒動に巻き込まなければ、りっちゃんはアイツに見つからずにすんだ。


ああ、それに。
どうしようもない馬鹿なオレは、墨田になんて言った。


いらないなら、寄越せと言わなかったか。
壊されても構わない、御門の退屈しのぎになれば。玩具の替えなんていくらでもある、と


そんな下衆な事を、考えていなかったか。


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あきゅろす。
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