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Side 西崎
※西崎視点です。
生徒会補佐になる。
目が痛くなりそうに綺羅綺羅しい美貌の男の宣言に、斎藤は呆然とした。
元々大きい瞳が、更に瞠られている。
「……はぁっ!?」
一拍置いて斎藤は勢い良く立ち上がった。その拍子に椅子が倒れ派手な音をたてる。
だがそれに構う事無く斎藤は、男……設楽安史に詰め寄った。
「な、何それどーゆー事!?」
対する設楽安史は、襟首を掴まれそうな勢いにも関わらず、照れた様に頬を染めた。
顔が近いとか言う気なら、アイツには空気を読む機能が備わっていないに違いない。
「……大丈夫なのか」
オレがため息混じりに呟いた言葉は、喧騒に混じり誰の耳にも届く事無く掻き消えた。
この設楽安史という男、本当に読めない。
かつて敵として対峙していた頃の、病んだ部分…まるで神経毒の様な危うさは消えたものの、本来の性格が変わった訳では無い。
狡猾で残虐な部分は、斎藤には無いもので、味方として頼もしいと思う。
だが、斎藤を前にした時の挙動不審さを見ていると、不安が過るのも事実だ。
恋愛沙汰にはまるで疎いオレでも分かる位、素直な好意を向けている様は、まるで犬。
中東が原産国の毛足の長い犬種……確かアフガンハウンドと言ったか。アレに見える。
真剣な話をしているにも関わらず、躊躇いがちに斎藤の背中へと回されそうになった奴の手を、オレは問答無用で叩き落とした。
向けられた恨みがましい目を黙殺する。
「説明してやれ」
「……はい」
不服そうに眉を潜めながらも、設楽安史は斎藤に説明を始める。
昨日の全校集会の顛末を、斎藤は見届けてはいない。
指名された後、オレや武藤が、戸惑いながらも協力してくれたクラスの連中の手を借り、一足先に部屋に帰らせたからだ。
講堂内に剣呑な雰囲気が流れ始め、もし斎藤の存在がバレて囲まれてしまえば、どうなるか分からないという理由から。
一人一人では動けずとも、人は集団になると残虐な行為も行えてしまう。
危惧した事態は回避し、何とか逃がした後、それは起こった。
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