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何ですと!?


「…………」


ハァ、と深いため息を吐き出す。

見ず知らずの人達に嫌われるのも、気分の良いものでは無いけれど……今は正直、しずかちゃんや日下部先輩の反応の方が気になる。


仕方の無い事とはいえ、騙していた事実は変わらない。
嘘はついていない。でもオレは、彼らの探し人が自分であると知りつつ黙っていた。


敵なのに騙していた、なんて思われるのかな。
裏切られたと、傷つけてしまうのかな。

ネガティブな思考がぐるぐると渦を巻く。……自業自得とはいえ、怖い。


「…………?」


鬱々と沈み込み机に懐くオレの頭に、誰かの手が触れた。
そのまま壊れ物を扱う様な手つきで、ゆるゆると髪を撫でる。


髪を撫でられた事は初めてでは無いが、こんなにも丁寧な手は初めてかもしれない。
西崎でも武藤でも無いソレにオレは戸惑い、ゆっくりと顔を上げた。


「……!」


机の前にしゃがんだ人と目が合い、それが誰かを理解したオレは目を瞠った。


言葉を無くすオレを見て、至近距離にある翠緑の瞳が弓形に細められる。
彼が首を傾げると、絹糸みたいなプラチナブロンドがサラリと揺れた。


「おはよう、凛」


甘い声音に、甘い笑顔。
目も眩む様な麗しい笑みに、オレはパチパチと瞬きを繰り返す。


「……おは、よう?」


放課後だし寝てた訳じゃない、と言う素直な気持ちが表れ、疑問系になってしまったが、彼は気にせず嬉しそうに頬を染めた。


綺羅綺羅しいソレに、思わずオレは遠い目をする。
美形の照れ顔パネェ……至近距離で見続けていると目をやられそうだ。


……ではなくて。


「……どしたの、安史」


逃避しかけた頭を無理矢理戻し、オレは彼に問うた。
病んだ部分が完治したかの様に、邪気の無い顔で子供みたいに笑う彼、設楽安史に。


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あきゅろす。
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