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憂鬱な時間


「……疲れた」


その日の授業を全て終えたオレは、脱力し机に伏した。


「……先が思いやられるな」


前の席に座る西崎は、そんなオレを見下ろしながら、長いため息をつく。
反論したいが、出来ない。オレも先行きが不安だ。
初日からこうまでとは。


1日を通して、オレは見世物状態だった。


休み時間や移動中は常に人の目が集まり、至るところから影口を叩かれ、漸く授業が始まったかと思えば、教師までマジマジと見てくる始末。


流石に教師の視線には悪意は無いものの、黒板から教科書に移す視線がオレを一回経由する頻度がかなり高い。
全員が全員それをやるものだから、オレよりも先に、クラスメイトがブチ切れた。


2限目の中頃に西崎がキレて、気もそぞろな教師のいい加減な板書のミスを全て指摘し、慌てる教師に向かい『授業をして下さい。先生』と嘲笑と共に言い放つ。
真っ青になった教師は、その後此方を見ず、無心に黒板に化学式を書き続け、鐘が鳴ると逃げる様に出て行った。


それを見た他のクラスメイトは面白がり、次々と同じ様に教師を沈めていく。
委員長の羽生に至っては、授業開始直後『先生は噂に躍らされ、何もしていない善良な生徒を不躾に眺める様な真似はなさらないですよね』と真っ正面から辻斬りをかました。


その教師は授業の間、教科書から顔を上げる事は無かった。


『だって、もう飽きたよ。一々間違い探すのもメンドいしねぇ』と言った彼の笑顔が真っ黒に見えたのは、幻覚では無かったと思う。


何はともあれ、クラスメイトのお陰で、授業中は割と穏やかに過ごせそうな気がするが、それ以外は寧ろ、これからが本番と言いますか……。


「…………」


はぁ、とオレは深くため息をついた。


放課後になった。
放課後になってしまったのだ。
オレは行かなければならない。


……何処にって、勿論、生徒会室ですよ。


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