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話が一区切りつき、フゥ、とオレが息を吐き出したのを見越した様に、ナイスなタイミングで鐘が鳴った。
キーンコーン……
一限はサボってしまった。
まぁ、センセの数学だったので、自習だったでしょうが。
伸びをすると、センセは苦笑を浮かべる。
「長い時間、悪かったな」
「いーえ」
どのみち、いつかセンセには話さなきゃとは思っていたし。
何時も多大な迷惑かけているのに、此方の内情は全く話せない状況がもどかしかった。
「……センセ」
「ん?」
改まると、何か恥ずかしいな。
背中がムズムズするのを我慢し、オレはセンセに向かって頭を下げた。
「……これからまた、迷惑をかけてしまうかもしれないけど、よろしくお願いします」
「……凛ちゃん」
呆気にとられた様なセンセの声が、余計居たたまれない。
オレはどんどん熱くなっていく顔を誤魔化す為、勢い良く立ち上がった。
「じゃあ、もう時間だし、行きます!」
「あ」
2連続でサボる訳にはいかないし!と言い訳めいた事を言いながら、出入口を目指す。
センセが何事か言おうとしているのを、敢えて聞こえないふりで。
「待った」
だが、戸に手を掛ける直前、センセに手を掴まれた。
振り返ると、思いの外真剣な目とかち合う。
「……約束だ」
「え?」
瞠目するオレを見つめたまま、センセは言葉を続ける。
「ちゃんと言えよ。大人げ無い暴走はしないから、何かあったらオレにも言え」
「……センセ」
「蚊帳の外は、もう無しだ」
とても静かな目で、センセはそう言った。
その言葉に、どれ程歯痒い思いをさせていたのかを知る。
「……はい」
神妙な顔で頷くと、センセは安堵した様に相好を崩し、オレの手を離した。
約束だぞ、と念を押す彼に苦笑を返し、もう一度頭を下げたオレは、今度こそ部屋を後にしたのだった。
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