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オレの事
「…………」
驚き過ぎて、オレは暫く反応を返せなかった。
たぶん、かなり間抜けな顔になっていたと思う。半開きになっていた口を慌てて引き結ぶと、センセは苦笑した。
少し困った様な笑顔さえも、完璧でビビる。なんだこの人、本当にセンセ?
百戦錬磨のお姉様方でさえ、笑顔一つで陥落されてしまいそうな、魅力的な大人の男。
オレと比べるとLEVEL1とLEVEL∞って感じでしょうか。まぁつまり勝てる見込みがゼロって事です。
「……凛ちゃん、驚き過ぎだろ」
プ、と吹き出したセンセは、可笑しそうに肩を揺らす。
オレはバツが悪くなって、眉をひそめた。
「……だって、予想外だったんですもん。オレはてっきりまた怒られるんだと……」
拗ねたガキみたいな事を言うオレに、センセは目を細める。
口角を吊り上げた彼は、意地悪そうな表情を浮かべた。
「そんな事しても、お前さんには逆効果だと気付いたからな。……早々何度も逃がしてやるなんて思うなよ?」
「…………」
……あれ。オレもしかしてやぶ蛇?
起こさなくていい魔王を起こしましたか。
センセは此方に手をのばし、オレの顎を一撫でした。
オレは、体を跳ねさせ身を引く。
オレ犬猫扱い!?
「……おっと。楽しい戯れ合いはこの辺にしとくか。時間が無くなるからな」
「全く楽しく無かったですけどね……」
……完全に掌で転がされている。
脱力しながらも、オレはそれ以上反抗する事を止めた。
時間が惜しいと言うよりは、これ以上墓穴は掘りたくない心境で。
「……何処から、話すべきなのかなぁ」
独り言のつもりで呟いた言葉を拾ったセンセは、何処からでも、と居住まいを正した。
オレもキチンと座り直し、向き合う。
そうだ。先ずは、確認しておきたい事があった。
「センセは、会長……御門暁良が、族の総長をしている事は、知っている?」
「あー……耳に挟んだ事はあるな。青いなぁ、と思った覚えがある」
たいして興味なさそうな口振りだ。だが何故か、言葉に重みがある。
……センセも昔、やんちゃしてそうではあるからなぁ。
怖いから突っ込まないけど。
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