Main 3 戯れ合っているクラスメイトの間を通り抜け、自分の席へと向かうと、西崎が既にいる。 騒がしい教室の中、我関せずといった風体で、無表情のままペラリと手元の文庫本のページを捲った。 「おはよう、西崎。」 カバンを置きながら、前の席に座る西崎の背中に向かって声をかける。 一拍、間を空けて、手元の本を閉じた西崎は、オレを振り返り、相変わらずの平坦な声で一言。 「お早う。」 と呟いた。 オレはそれにヘラリと笑って、席に座る。 ……なんか、気が抜けた。 何時も通り朝起きて、学校に来たけど、内心は逃げ出したい位ビビってた。実は。 あんな事があった訳だし、色んな事が変わってしまって、オレが好きだった穏やかな日常は、二度と戻ってこないんじゃないかって。 それなのに、こうやって、クラスメイトも、西崎も、何時も通り。 隣の席に突っ伏して眠る武藤も何時も通り。 一歩クラスを出たら、好奇と敵意に曝されるのは分かっているけど、 それでも、こうして、変わらず接してくれる奴が、こんなに沢山いる事が、 馬鹿みたいに、嬉しいんだ。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |