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「……っ、」
今日何回、りぃ、って呼ばれた?
この短い時間の中で。
最初の時以外、ずっと呼んでくれているこの人の気持ちを、オレはなんで無意識に避けていたんだろう。
(オレだけの呼び方、だ。…そう呼んだ時は、メチャクチャに甘やかしてぇ時だから、遠慮せずに来いよ。)
――甘え下手なオレを見越して、こんなにも分かりやすいサインをくれていたのに、
「…くろ、さんっ…、」
『ん?』
「…オレ、心配…?」
『………、』
僅かに困惑したような間の後に、黒さんは息を吐くように『ああ。』と呟いた。
『…当り前だろ。ずっと、…ずっと心配してるよ。馬鹿りぃ。
ケガして無いか、
無理して無いか、
泣き虫なお前が、一人で泣いて無いか、ずっと。 』
――笑ってろ。
貴方は別れの時、そう言った。
それをオレは、
強くあれ、と曲解した。
何があっても、笑える強さを持てって事だと。
でも、違った。
全然、違う。
小難しく考える必要なんて無い。
貴方が傍にいない間に、
オレが泣かないように、
ケガしないように、
貴方はただ言葉のまま、オレの幸せを望んでくれていたんですね。
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