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5
「…………、」
オレは、ハ、と不自然に息を逃がす。
呼吸を深く整える事も出来ない。
なんだって貴方は、そんなにオレを甘やかす天才なの。
『…誰より頑張り屋で、誰より甘え下手なお前が、漸く伸ばした手くらい、オレがとりてぇんだよ。』
電話越しなのに、いつもみたいに髪を撫でられているような錯覚さえした。
少し弱ったような声は、ただひたすらに甘い。
『お前は、懐に入れた人間には底抜けに甘いから、自分よりまず周りの奴を気遣う。…だからオレはその分まで、お前の痛みに気付けるようでありたいと思った。』
不器用なオレは、上手く甘える事が出来ないまま、一人で立つ方法ばかり探していた。
貴方を『家族』だと、面と向かって言えなかったのも、それが一つの理由。
大好きなのに、
大切なのに、
どうしても、手を伸ばす事が出来なかった。
大好きだから、
大切だからこそ、
重荷に思われたらどうしようって、怖くて――。
「………っ、」
『…まぁ、自己満足だけどな。』
苦く笑う黒さんに、オレの視界がジワリとぼやけた。
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