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「……なんで、謝るんですか。」
暫く固まっていたオレは、呆然と呟く。
思いの外、衝撃が強かったのか、声は擦れてしまったけれど。
黒さんは穏やかな声で、少しだけ困ったように、りぃ、と呼ぶ。
むずがる子供を宥めるような、優しい声音に、オレのモヤモヤは大きくなった。
厳しくされるのは、いい。
自分が立てているかを。
ちゃんと自分の道を、自分の足で歩けているかを、実感出来るから。
でも、甘やかされたら、どうしたらいいか分からない。
今居る位置さえ、見失ってしまいそうで、
――怖い。
「オレが、勝手に貴方に電話したんですっ!出れなくても、貴方に落ち度なんて…」
『りぃ。』
「…っ、」
少し強めに呼ばれ、オレは言葉を区切り、唇を噛み締めた。
『…馬鹿りぃ。』
「……………。」
どうせ、馬鹿ですよ。
負け惜しみのような言葉は、口を開けば涙声になってしまいそうで言えなかった。
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