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「……………、」
ああ、どうしよう。
かけなければ、よかった。
プルルル…プルルル…
「……っ、」
手が、緊張ではなく震える。
こんな、弱くなる為に、電話をした訳じゃないのに。
貴方を思い返すだけで、寂しくて、心細くて、
一緒に暮らしていた間、
貴方が、どれだけオレを守ってくれていたかを思い知るんだ。
「……………、」
例えば、煙草の匂いが消えて、代わりにボトルガムが部屋に常備されるようになった事とか。
例えば、バイクのメンテはしてるけど、近場の買い物は必ず徒歩で、荷物持ちに一緒に来てくれる事とか。
プルルル…プル、
『…、凛っ?』
珍しくも慌てたような声は、やや息切れしていて、
オレは泣きそうになるのを堪え、笑った。
「…はい。」
――例えば、
オレがかけた電話が、貴方に繋がる確率が100%な事
、とか。
日常の『当り前』は、
貴方がオレを大切に思ってくれる証でした。
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