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当り前のキセキ
プルルル…プルルル…
「……………、」
プルルル…プルルル…、
手に汗握る程感じていた緊張は、だんだんと失望に変わる。
オレの空回りを笑うみたいに、呼び出し音だけが虚しく響く。
「……………、」
そういえば、そもそも携帯を常に持ち歩くような人では無かった。
オレが留守番してる時とか、別行動している時は、ちゃんと持っててくれるから忘れてたけど、家に居る時は充電すらせず放置してる事もあるし。
実は大雑把で、適当な部分がある人だったりする。
オレを拾ってからは、オレにあわせて規則正しい生活をしてくれてたけど、今はどうなんだろう。
ちゃんと、ご飯食べてますか?
レトルトばっかりじゃ、駄目ですよ。
朝、起きれてますか?
学校サボっちゃ、駄目ですよ。
お酒も煙草も駄目ですからね。
『お前、母親か嫁さんみてぇだよなぁ。』
照れの混じった苦笑で、そんな事言われたのを思い出す。
口煩く言って嫌われたらどうしよう、というオレの杞憂を払拭するみたいに、貴方は小さく『心配してくれてサンキュ。』と呟いて、オレの髪を撫でる。
からかわれたけど、嫌な顔は絶対しなかった。
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