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そっか。
西崎は、呆然としたオレの手に、そっと何かを握らせる。
ゆっくりと手のひらのそれを確認すれば、見慣れた白い長方形。
一つ前の型のオレの携帯。
「……………、」
そっか。
なんかオレは勘違いしていた。
いつも少しだけしてくれるフォローも、与えられるのを待つだけで、下さいとは言えなかった。
此方から手を伸ばす事が、全面的に寄り掛かる事に思えて…
陽の事でさえ、黒さんが知らないわけない、と頭では理解しているのに、連絡を取る事に、どれ程時間を費やしたか。
ボタンを押す指が、どれ程震えたか。
「………………、」
ただ、声が聞きたい日も、沢山あった。
つか、毎日。
でも黒さんの声は、オレに強さをくれるけど、同時に弱い部分も暴いてしまうから、
オレは、かける事が出来なかった。
立てなくなる事が、怖くかったんだ。
「………………。」
ああ、でも、そっか。
立てなくなっても、
寄り掛からせて下さい、ではなくて、
支えて下さい、って、
お願いすれば、よかったんだな。
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