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履き違えるな


「…お前が、そんだけ大切に思ってんなら、相手だってお前が大切だろ。」


違うか?と武藤はオレを覗き込む。

その薄いグレーの瞳は、色彩とは逆に、思慮深い光を宿していた。


オレが、黒さんを大切に思っているのは、言うまでも無い事だけれど。

逆を問われ、オレは戸惑う。


「………………。」


改めて考える場面なんてなかったけど、今までの一緒に過ごした日々を思い返せば、悩む必要なんて、ない。


黒さんに、大切にされている自覚はある。
そうでなければ、オレはこんなにも早く立ち直る事は出来なかった。


オレは考えながら、フルフルと、横に首を振る。


「…ちがわ、ない。」


子供みたいな仕草をするオレの頭を、武藤は、ぽん、と宥めるように軽く叩いた。


「…なら、何にも言われねぇ方が、絶対辛い。…………少なくとも、オレならそう思う。」


その穏やかな瞳と言葉に、オレはゆっくりと目を瞠った。


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