Main chain 『特別』という言葉は、物心ついた頃から、当り前にあった。 『神童』 『麒麟児』 『神の寵児』 繰り返される賛辞と、 畏敬や憧憬を含んだ眼差し。 何度も何度も、『貴方は特別』だ、と言われ、その度に、『特別』という言葉は、そんなにも薄っぺらい言葉だったか、と嘲笑が込み上げてきた。 あまりにも繰り返される言葉にうんざりとはしたか、それ以上感じるものも無く、 誇らしい気持ちは無い。 だが、苛立ちや寂しさも無い。 ただ漠然と、 この世は、 なんてつまらないんだろう、 と思った。 何でも思い通りになる世界に、一体どれだけの意味がある。 望まなくとも手に入るものに、どれ程の価値がある? 思うがままになる、人、金、物。 その全てにオレは、なんの意味も見いだせない。 オレは、 世界に飽いていた。 ――たった一つ、 執着できるものを見つけた、あの日まで。 . [次へ#] [戻る] |