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「……オレには、義務ばかりだった。父も母も、こうあれ、と押しつけるばかりで、」
戸惑うような言葉を、オレは黙って聞く。
「華道は、好きか嫌いかも考える隙無く押し付けられて、家を継ぐ事も、疑問に思った事は無くて…静も、静の母も、憎め、と言い続けられていた。」
其処に、オレの意志は無い、と尚久さんは辛そうに呟いた。
途方に暮れたような表情の彼に、オレは手を伸ばす。
「…じゃあ、考えましょう。」
「え…?」
「…好き、なのか、嫌い、なのか、…貴方がどうしたいのか。」
「……オレが、どうしたいのか、…」
オレの言葉を繰り返す尚久さん。
継がなければいけない、ではなくて、継ぎたいのかどうか。
しずかちゃんとの関係も、お母さんは関係無く、貴方がどうしたいのか。
自分で決めなければ、いつか、固執していた華道さえも、憎む日が来てしまうかもしれないから。
「………………、」
じっと真剣な顔で、考え込む尚久さんを、オレは見守っていた。
「……、」
ふと、
尚久さんに意識を向けていたオレの耳に、遠くから駆けてくる足音が聞こえた。
漸くこの痛みが緩和されるのかと、ホッと息をついたのも束の間。
バタバタバタ…バンッ!!!
「りっちゃんっ!!?」
「っ!?」
激しい音をたてて、扉が開いた。
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