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好きなもの
「……っ、…本当に?」
「はい。」
泣きそうに顔を歪める彼に、オレが笑ってみせると、彼は、細く息を吐き出した。
「……すまない。本当は、話すのも、辛いだろう…?」
不安が和らいだ彼は、オレを心配げに覗き込み、申し訳なさそうに俯く。
「…いいえ。……そうだ、少し、お話し、…しましょう。 …話してた方が、気も紛れるし。」
正直、黙って目を閉じていると、意識が飛びそうだ。
そんな事になったら、どれだけ尚久さんに、心配かけてしまうか分からないし。
「…いいのかい?」
「はい。…と、言っても、あんまり頭、…回らない、んで。…変な事言っても、気に、しないで下さい。」
苦笑を浮かべると、尚久さんは、ありがとう、と呟いて、漸く笑ってくれた。
「……………。」
と、言ったはいいけど、気のきいた質問は、全く浮かばない。
「…斎藤君の、」
オレが、考えている間に、尚久さんは、ポツリ、と呟いた。
「…はい?」
「好きなもの、を、…教えて欲しい。」
真剣な顔でそう言った彼に、オレはキョトンと目を丸くした。
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