Main
6
※尚久視点です。
「……、」
そう理解したオレは、彼の体を抱く手に、力を入れそうになって、慌てて自制する。
彼は、怪我をしている。
そんな事は、出来ない。
それでなくとも、こんな細い体…力を込めたら、砕いてしまいそうで、怖い。
「…………っ、」
ああ、でも
抱き締め、たいんだ。
「……………、」
まるで、深海にいるように、上手く呼吸が出来ない。
初めて、なんだ。
今迄、誰にもこんな気持ちにならなかった。
親も兄弟も、
友人も婚約者も、
自分で選んで付き合っていた彼女ら、さえ
オレの感情の欠片さえ、動かせなかったのに、
君をこの手に抱いている、というだけで溢れる、この気持ちを、何と呼べば良い。
「………っ、」
君と会えたこの奇跡を、
オレは誰に感謝したらいい?
何故、こんなに、
君が、――
愛しい?
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!