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※尚久視点です。
「………………。」
呆然とした。
何を言われたかを頭が理解する前に、体が震える。
まるで、オレの溢れる気持ちを表すように。
「………、」
オレが、理解出来ないまま、惚けている間も、彼はただ暖かい目で、オレを見守っていた。
痛くない、筈、無い。
現に、彼の顔色は、既に紙のようだ。
なのに彼は、オレの意識が追い付くのを、ただ黙って待っているんだ。
「……っ、」
なんで、こんな子がいるんだ。
他人は、…人間は、利己的な生き物の筈じゃないのか。
誰しも自分が一番だろう。
こんな利益にもなり得ない事に、何故体を張れる?
何故、オレなんかの為に、
君は――、
「…………っ、」
「っ!?」
彼の体が、グラリと揺れる。
オレはその体を、咄嗟に抱き止めた。
「…!!」
その、小ささに、瞠目する。
その、軽さに、驚かずにはいられない。
君は、
こんな小さな体で、
オレを、――庇ったのか。
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