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※尚久視点です。


「…結局、弟も離れて、……オレは、独りぼっちに、なった。………家族、って、特別な存在で、…守ってくれるシェルターみたいな、場所、で………………………無くすのは、怖い、です。」


そうだ。


…オレは、怖かった。


この場所を無くす事が、全てを無くす事と同じ事に思えて、


必死に、しがみ付いていた。



オレに興味の無い父親。
過剰な期待を掛ける母親。
離れに暮らす愛人と、
腹違いの弟。


既に其処は、家族なんて呼べない代物に成り果て、繋がりなんて無いに等しく。


―――それでも、


たった一つの、居場所だった。


親しい友と呼べる存在も、
愛しく思う恋人もいないオレにとって、


唯一残された場所。


華道、という


憎く、


けれど焦がれる、唯一の道は。


「……でもね、尚久さん。」


彼は、顔を上げて、オレを見る。


痛みに、額に汗を浮かべ、青ざめた顔で、


けれど真っ直ぐに、彼の漆黒の瞳が、オレを捉える。


「他人でも、家族になれるんですよ…?」

「………え?」


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あきゅろす。
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