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「……いいかげんな事を……」
尚久さんは、オレを睨むが、その目には動揺が浮かぶ。
「……分かります。」
オレが繰り返した言葉に、彼の動揺は大きくなった。
一旦緩んだ力が、また込められたが、彼の動揺を如実に表す指先が、カタカタと震えている。
「君に、分かる筈無いだろうっ!!」
耳を塞ぐように、拒絶し否定する彼に、オレは泣きたくなった。
…オレも、こんな風に拒絶しか出来なかった。
あの人の手が無かったら、きっと、今も、だった。
「な、ぉ…、……っ!?」
彼を呼ぼうとしたオレの声は、途中で消えた。
彼の肩越し、キラリ、と鈍く光る何かに目を奪われる。
「…っ!!!」
ソレは、恐怖に涙を流しながらも、彼を止める為に、少女が振り上げた刄で、
さっきまで彼が持っていた携帯用ナイフか、とか場違いに考えながらも、オレは必死に首を振る。
恐怖に追い詰められた少女の、それは防衛本能なのか。
それとも必死に、オレを助けようとしてくれているのか。
分からない、でも、
――でも、その結末は、哀しすぎる。
「やめっ、…!!」
「…っ!?」
叫んだオレにつられるように、尚久さんは振り返る。
「………、」
己へ、ナイフを振り上げる少女を見て、目を瞠った彼は、止めるでも無く、
ただ静かに、
諦めたように、
解放されたかのように、
苦く、笑んだ――。
――ザクッ、
.
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