[携帯モード] [URL送信]

Main
4


「君に、何が分かるっ…!!」


激昂した尚久さんは、オレを壁に押し付けるように、首を締めあげてきた。


「甘やかされて愛されている奴に、オレの何が分かる!?…幼い頃から、傍にいたのは、過剰な期待を押し付けてくる母親だけ。同い年の子供と遊ばせて貰う事も許されず、ただ華道のみしか与えられなかった…そんな奴の苦しみが、分かるのか!?」

「……っ、は」


ギリッ、と締めあげる手に、力がこもる。


壁に押し付けられた背だけを支えに、爪先が浮き上がる程締められ、呼吸が辛い。


肩越しに撫子さんが、泣きそうな顔で見ている事に気付いたが、逃げて、と口を動かす事も出来なかった。


「たった一つしか持たない人間が、ソレを奪われる怖さが、君に分かる筈無いっ…!!」

「っあ…!!!」


オレは酸素を求め息を吸うが、締められている喉は、ヒューヒューと、耳障りな音をたてるだけ。


ぼんやりしてきた頭で、それでもオレは、真っ直ぐに彼の目を見る。
目の前のこの人を、もう怖いとは思えなかった。


陽に、似てるとも思ったけど、それ以上に、


この人は、オレに似ている。



黒さんに出会う前の、オレに。


.

[*前へ][次へ#]

22/132ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!