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「オレは得するよ?撫子がこれで孕めば、尚良し。…この家は、オレのものに、なる。」


そう言って尚久さんは、歪んだ笑みを浮かべた。


通常なら、恐れるべきかもしれない。
生物としての本能は、逃げろ、と言っている。


…けれど、


身近に、痛みを歪みで覆い隠していた人がいたからだろうか。


オレはその恍惚とした笑みに、――苦しみを、見つけてしまった。





「……本当に、それで、満足ですか?」

「……?ああ、満足だよ。」

「本当に?」

「………………?」


間髪入れずに、言葉を重ねるオレに、尚久さんは訝しむように瞳を眇めた。


「……何が言いたい?」


苛立ったような、低い声で呟く尚久さんに、オレは静かな声で、再度問う。


「そんな方法で、この家を手に入れても、貴方は独りぼっちになるだけですよ。…本当に、それでいいんですか?」

「っ…!!」


ガンッ、
「っ、」


尚久さんは、オレの胸ぐらを掴み、壁に叩きつけた。


後頭部を強かにぶつけ、一瞬視界が揺れる。


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あきゅろす。
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